子供のころ、「雷が鳴るときはおへそを隠せ」とよく言われた記憶はありませんか?
この風習は日本各地で語り継がれています。
一部では、「雷さまがおへそを狙う」として注意を促すものでした。
しかし、実際に雷さまが存在するわけではありませんし、おへそを具体的に狙うこともありません。
この言い伝えには、古くからの意味が込められているのです。
今回はその背景と、なぜこの言い伝えが生まれたのかを掘り下げていきます。
おへそを隠す風習の由来
「雷さま」とは、主に雷を司る神様を指します。日本では雷神とも呼ばれ、神道や民間信仰に深く根ざしています。
雷神の別称には「雷電様」「鳴神」「雷公」という名前があります。
この神様は鬼のような姿で描かれることが多く、牛の角や虎の皮を身につけ、太鼓を打ち鳴らす姿が伝えられています。
古くは、子どもが夏場におへそを露出すると、大人たちは「雷さまがおへそを取りにくる」と警告したものです。
「おへそを取る」という表現は、本来的には「魂を抜き取る」を意味し、「命を奪う」と解釈されていました。
実際に魂を抜かれるわけではないですが、この風習には古来より恐れを抱く背景があります。
このようにして伝えられる由来は、地域や説によって異なりますが、共通しているのは雷を恐れ、敬う文化が根底にあることです。
雷が鳴る際におへそを覆う根拠と背景
おへそを隠す風習が合理的な根拠を持つとされるのは、大きく二つの理由に分けられます。
・雷からの安全確保
・体温の保持
これらの理由について詳しく見ていきましょう。
雷からの安全確保
「おへそを隠すことで身を守る」というのは、一見すると奇妙に思えるかもしれません。
実際におへそを手で覆ってみてください。
この動作で自然と前かがみの姿勢になるでしょう。
雷は高い場所に打ち込まれる傾向があるため、この姿勢によって体を低く保つことができます。
これにより、雷のリスクを微妙にでも減らすことが可能です。
ただし、広い平野や木々のない場所では、この方法はあまり効果がないため、早急に安全な場所へ移動することが推奨されます。
「自分が雷に打たれる確率は非常に低い」と考えるかもしれませんが、稀に雷に遭遇する人もいるため、用心することに損はありません。
体温の急な低下を防ぐため
次に、体温の急激な低下を防ぐためにおへそを隠す理由について解説します。
雷が多く発生する季節は、通常8月で、この時期は大気が不安定で雷雨が頻繁にあります。
「真夏に体が冷えるわけがない」と思うかもしれませんが、実は違います。
雷雨が起きると、気温が急激に下がることがあるのです。
この現象は、積乱雲が形成される過程に関連しています。
地面近くの暖かい空気が上昇し、それによって上空の冷たい空気が地面方向へと下降することで対流が生じ、冷たい空気が地面近くまで到達します。
真夏に薄着で過ごすことが多く、特に子どもたちは暑さでお腹を出すことがあります。
しかし、雷雨の際は急に冷え込むため、そのままでは腹痛を起こしたり、場合によっては風邪を引くリスクも高まります。
子どもたちは特に免疫力が成人に比べて弱いため、体調管理がさらに重要です。
このような背景から、「雷が鳴ったらおへそを隠す」という言い伝えがあり、子どもたちが急な気温変化により体調を崩さないように、服をしっかり着て体を温めるよう促されています。
「雷が鳴るとおへそを隠す」風習の意味のまとめ
「雷が鳴るとおへそを隠せ」という風習を概観しました。
この慣習は元々、「雷さまがおへそから命を奪う」という不吉な言い伝えから始まりましたが、現代ではこれが実際に身を守る機能を持つと認識されています。
具体的には、「雷は高所を目指すため、低くするためにお腹を隠して前屈みになる」や、「冷たい空気が下降してきて体調を崩さないように、お腹を隠す」というように、実際の安全対策としての科学的な根拠があります。
雷が鳴る時には、この古い言い伝えを実践して、自分の身を守ることをおすすめします。